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こんにちは、SELECT SHOP ROOTS135°です。 SELECT SHOP ROOTS135°の新しい試み「瀬戸内よいもの便り」はご覧いただけたでしょうか。 私たちが暮らす瀬戸内の魅力や、瀬戸内の職人たちが培ってきたものづくりの技術を多くの方に知っていただきたい、お伝えしたい、そんな想いから始まった企画です。 未だ見ぬ瀬戸内の魅力を発見し、興味を持っていただくきっかけになれたら幸いです。 瀬戸内発の「モノ」たちとの出会いを楽しんでください。 今回のスタッフルームは、そんな「瀬戸内よいもの便り」でご紹介している【遠藤窯】さんが作る焼き物「砥部焼(とべやき)」の歴史や魅力について、少し掘り下げて綴ってみたいと思います。 ■目次■ ・砥部焼の陶里「愛媛県砥部町」 ・砥部焼の誕生秘話 ・現在までの砥部焼 ・砥部焼の特徴、魅力 ・まとめ ~SELECT SHOP ROOTS135°の想い~ -砥部焼の陶里「愛媛県砥部町」- (写真は現在の砥部町の風景) 砥部焼は、愛媛県砥部町を中心に作られる陶磁器です。 一般には、食器、花器等が多く、愛媛県の無形文化財に指定されています。 砥部町は愛媛県の中央に位置し、砥部川が町の中心部を流れる盆地状の地形です。 砥部の盆地は、山裾の傾斜が窯の立地に適しており、周囲を囲む山々から燃料となる木材が簡単に手に入ったため、古くから焼き物作りに最適な土地でした。 実際に、6~7世紀頃のものとみられる須恵器の窯跡がいくつも発見されています。 かつての奈良・平安時代から、砥部・外山の砥石山から切り出される砥石は、「伊予砥」と呼ばれて、中央にもよく知られた存在でした。 今では磁器の砥部焼も、江戸時代の半ばごろまでは山から陶土が採れることもあって、陶器が作られていたということです。 -砥部焼の誕生秘話- 砥部焼が誕生したのは今から約240年ほど昔、江戸時代です。 その背景には次のようなエピソードがあります。 砥部は江戸時代には大洲藩に属しており、伊予砥の生産も変わらず盛んに行われていました。 一方で砥石の切出しの際に出る砥石屑の処理は大変な重労働で、当時この処理作業に従事させられていた村人たちが過酷な労働に耐えられず、暴動を起こす事態にまで発展したそうです。 そんなとき、伊予砥の販売を一手に引き受けていた大阪の砥石問屋が、天草の砥石が磁器の原料となることを聞きつけ、大洲藩に伊予砥の屑石を使って磁器を生産することを進言しました。 この進言を受けて、財政状況の厳しかった大洲藩は、新たな産業を生み出そうと、捨てるしかなく、悩みの種だった砥石屑を原料にした磁器の開発を始めたのです。 これが、安永4年(1775年)の事でした。 この開発の責任者に人選されたのが組頭の杉野丈助です。 丈助は肥前から呼び寄せられた5人の陶工とともに、五本松の上原(今の砥部町五本松)に窯を築き、試焼・本焼を行いました。 しかし、釉薬が解けず、地肌に大きなヒビが入るという問題に直面し、何度繰り返しても解決することはできません。 とうとう、仲間の陶工たちは愛想を尽かして故郷へ帰ってしまうという事態に。 ひとりになっても丈助は試行錯誤を繰り返し、終いには窯にくべる薪が無くなり、自棄になって、家の柱や畳まで燃やしたそうです。 そんな折に筑前の陶工から釉薬原料の不良が失敗の原因だと聞き、新しい釉薬を探し求め、試しました。 その結果、安永6年(1777年)、ついに白磁器の焼成に成功したのでした。 1人の人物の努力と苦悩、希望と執念が結実したのが砥部焼だったと言っても過言ではないかもしれません。 -現在までの砥部焼- 白磁器焼成の成功後も、釉薬の原料石を近隣地域で採掘し、安定供給できるようにしたり、新たな陶石の発見によって、より白い磁器を作ることを可能にするなど、絶え間なく技術改良がなされていきます。 明治以降砥部焼は「伊予ボール」の名で輸出されるようになり、1893年(明治26年)シカゴ世界博覧会で砥部焼の「淡黄磁(たんおうじ)」が出品され1等賞に輝きました。 「砥部焼」の名は世界でも知られるようになっていきました。 戦争の影響で一時期は生産・販売が落ち込んだものの、戦後は手作りの良さが再び評価されることになります。 機械化されていく他の産地と比べ、手仕事の技術が高い評価を受けたためです。 若手陶工を中心に、ろくろや絵付けなどの技術向上に励み、近代的デザインへの後押しも多く行われました。 昭和51年、陶器の世界では全国6番目に「伝統的工芸品産地」として指定され、伝統的な砥部焼の技法は、今もしっかりと受け継がれています。 最近では、女性や若手陶工の手による伝統的な技法にこだわらないモダンで新鮮な作品も多くなっており、新たな魅力を見出した新しい砥部焼にも注目が集まっています。 -砥部焼の特徴、魅力- ぽってりとしたやや厚手の独特の形で、丈夫で使い勝手が良いことが砥部焼の1番の特徴であり、魅力です。 硬度が高く、丈夫で割れにくいため食洗機で洗えます。 さらに、熱に強いため電子レンジでの加熱も可能(使われている釉薬によっては対応できないものもあります)。 毎日の食卓に並ぶ、日常使いにぴったりのうつわです。 ぽてっと愛らしいフォルムは、毎日使うことが楽しみになるような、置いて眺めているだけで楽しくなるような、実用性とデザイン性を兼ね備えています。 砥部焼は、筆を使い手作業で絵付けを施されているものが一般的です。 描かれるモチーフも自然を手本にしたものが主流で、唐草紋、太陽紋、なずな紋などがよく知られています。 また、陶石を原材料に作られる「磁器」は、土が原材料で、あたたかみのある地肌の「陶器」と比べて冷たいイメージを持っている方が多いかもしれません。 ところが砥部焼は「磁器」ですが、乳白色のあたたかみある白磁なので冬でも冷たさを感じさせないから不思議です。 生活の中に溶け込んで、気取らず、飾らず、日常にそっと寄り添ってくれる。 そんな日々の暮らしにぴったりのうつわが多いことは砥部焼の大きな魅力です。 素朴な形と味わいのある色で、日常使いのうつわとして、永く人々に愛され続けている砥部焼。 誠実な姿勢で「ものづくり」を続けてきた産地は、現在では100近くの窯元たちが集い、時代にあった工夫とデザインを探求し、さらに発展を続けています。 -まとめ ~SELECT SHOP ROOTS135°の想い~- 砥部の土地が恵んでくれた資源を使い、そこに暮らす人たちが、そこでしかできない「ものづくり」を続けて、200年以上の歴史を紡いできた砥部焼。 昔から変わらないところ、時代とともに新しい人たちが集い、新鮮な風を吹き込んで、進化・発展していくところ、砥部焼はそのバランスがちょうど良いな、と感じます。 SELECT SHOP ROOTS135°は、そんな砥部焼の【遠藤窯】さんに出会いました。 ほっこりした雰囲気のご夫婦が営む小さな窯元です。 作品をお取り扱いさせていただくために、何度か窯へお邪魔させてもらいましたが、いつもおふたりの優しく、温かい雰囲気と親切な対応に居心地が良くなり、長居をしてしまいます。 砥部焼はおろか、焼き物についても一般的な知識程度の私たちに真摯に、丁寧に、語ってくださり、製法など細かなことまで教えてくださいました。 おふたりの対象に対して、真摯に、丁寧に向き合う姿勢が創り出される作品にも表れています。 この度、【遠藤窯】さんの作品を「瀬戸内よいもの便り」でご紹介できたことを、本当に嬉しく思っています。 多くの方に知って、使っていただきたい、使う人のことを考えた丁寧な「ものづくり」と食卓が楽しくなる「うつわ」たちです。 これからも「瀬戸内よいもの便り」では、瀬戸内の魅力に出会うきっかけになれるような「モノ」を厳選し、皆様へご紹介して参ります。 ご精読ありがとうございました。
2020-08-19 13:07:18
スタッフルーム | コメント(0)